PRTR制度とSDS制度を柱として、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止することを目的とした法律です。PRTR法と呼ばれることもあります。
1 PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)制度
PRTR制度の対象事業者が、対象化学物質を排出・移動した際には、その量を把握し、国に届け出る義務があります。
国等は集計データを公表し、また国民は事業者が届け出た内容について開示を請求することができます。
<PRTR制度の対象事業者>
第一種指定化学物質を製造、使用その他業として取り扱う等により、事業活動に伴い当該化学物質を環境に排出されると見込まれる事業者であり、具体的には次の1~3の要件全てに該当する事業者となります。
1.対象業種として政令で指定している24種類の業種に属する事業を営んでいる事業者
金属鉱業、原油・天然ガス鉱業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業、下水道業、鉄道業、倉庫業(農作物を保管する場合又は貯蔵タンクにより気体又は液体を貯蔵する場合に限る。)、石油卸売業、鉄スクラップ卸売業(自動車用エアコンディショナーに封入された物質を取り扱うものに限る。)、自動車卸売業(自動車用エアコンディショナーに封入された物質を取り扱うものに限る。)、燃料小売業、洗濯業、写真業、自動車整備業、機械修理業、商品検査業、計量証明業(一般計量証明業を除く。)、一般廃棄物処理業(ごみ処分業に限る。)、産業廃棄物処分業(特別管理産業廃棄物処分業を含む。)、医療業、高等教育機関(付属施設を含み、人文科学のみに係るものを除く。)、自然科学研究所
2.常時使用する従業員の数が21人以上の事業者
本社及び全国の支社、出張所等を含め、全事業所を合算した従業員数が21人以上の事業者。
3. いずれかの第一種指定化学物質の年間取扱量(*1)が1トン以上(特定第一種指定化学物質は0.5ト
ン以上)の事業所を有する事業者等又は、他法令で定める特定の施設(特別要件施設(*2) )を設
置している
事業者
(*1)年間取扱量:対象物質の年間製造量と年間使用量を合計した量
(*2)特別要件施設:
・鉱山保安法により規定される特定施設(金属鉱業、原油・天然ガス鉱業に属する事業を営む者が有するものに限る。)
・下水道終末処理施設(下水道業に属する事業を営む者が有するものに限る。)
・廃棄物の処理及び清掃に関する法律により規定される一般廃棄物処理施設及び産業廃棄物処理施設(ごみ処分業及び産業廃棄物処分業に属する事業を営む者が有するものに限る。)
・ダイオキシン類対策特別措置法により規定される特定施設
注) 対象物質の年間取扱量の要件とは別に、特別要件施設がある事業所を持つことが届出対象事業
者の要件の一つとなっています。
※第一種指定化学物質
PRTR制度の対象となる化学物質は、本法上「第一種指定化学物質」として定義されています。具体的には、人や生態系への有害性(オゾン層破壊性を含む)があり、環境中に広く存在する(暴露可能性がある)と認められる物質として、計462物質が指定されています。そのうち、発がん性、生殖細胞変異原性及び生殖発生毒性が認められる「特定第一種指定化学物質」として15物質が指定されています。
第一種指定化学物質の例
揮発性炭化水素 ベンゼン、トルエン、キシレン等
有機塩素系化合物 ダイオキシン類、トリクロロエチレン等
農薬 臭化メチル、フェニトロチオン、クロルピリホス等
金属化合物 鉛及びその化合物、有機スズ化合物等
オゾン層破壊物質 CFC、HCFC等
その他 石綿等
2 SDS(Safety Data Sheet)制度
SDS制度の対象事業者が、対象化学物質等を他の事業者に譲渡・提供する際には、その情報(SDS)を提供する義務があります。
SDS制度では、対象となる化学物質のほかそれらを含有する製品について他の事業者に譲渡・提供する場合に、SDSによる有害性や取扱いに関する情報の提供を義務付けるとともに、ラベルによる表示を行うよう努めることとしています。
※ラベル表示の努力義務規定については、純物質は平成24年6月1日から、混合物は平成27年4月1日から適用となります。
<SDS制度対象事業者>
化管法第14条に規定するSDS制度の対象事業者は、SDSの対象化学物質又は対象製品について他の事業者と取引を行うすべての事業者が対象となります。
PRTR制度と異なり、SDS制度には業種の指定、常用雇用者数及び年間取扱量の要件はありません。
※義務を遵守しない事業者には、経済産業大臣による勧告及び公表措置が行われる場合があります。(化管法第15条関係)
なお、SDSは事業者間での取引において提供されるものであり、提供先はあくまで事業者となりますので、一般消費者は提供の対象ではありません。
<対象化学物質>
化管法第14条に規定するSDS制度の対象となる化学物質は、「第一種指定化学物質」及び「第二種指定化学物質」として定義されています。具体的には、人や生態系への有害性(オゾン層破壊性を含む)があり、環境中に広く存在する又は将来的に広く存在する可能性があると認められる物質として、計562物質が指定されています。
第一種指定化学物質 PRTR制度、SDS制度の対象物質 462物質
第二種指定化学物質 SDS制度の対象物質 100物質
合計 562物質
人の健康及び生態系に影響を及ぼすおそれがある化学物質による環境の汚染を防止することを目的とする法律で、「新規化学物質に関する審査及び規制」、「市販後の化学物質に関する継続的な管理措置」、「化学物質の性状等に応じた規制」の大きく分けて三つの部分から構成されています。
具体的には、これまで日本で製造・輸入が行われたことがない新規物質に係る事前審査、すべての化学物質を対象としたリスク管理、製造・輸入実績数量(事後届出)、有害性情報の報告等に基づく評価、性状に応じて「特定化学物質」「監視化学物質」等を指定、製造・輸入実績数量の把握、有害性調査指示、製造・輸入許可、使用制限などが行われています。
第一種特定化学物質は、難分解性、高蓄積性及び長期毒性又は高次捕食動物への慢性毒性を有する化学物質です。PCBやポリ塩化ナフタレンなど平成26年5月現在で30物質が指定されています。第一種特定化学物質については、製造又は輸入の許可(原則禁止)、使用の制限、政令指定製品の輸入制限や第一種取扱事業者に対する基準適合義務及び表示義務等が規定されています。
第2種特定化学物質は、平成2年9月現在でトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなど23物質が指定されており、第35条に基づき届出等を行うほか、化審法第37条に基づき、容器、包装又は送り状に当該化学物質による環境の汚染を防止するための措置等に関し表示すべき事項を表示しなければなりません。 (当該法律は、化審法と呼ばれることもあります。)
1 法律の目的
第1条 この法律は、人の健康を損なうおそれ又は動植物の生息若しくは生育に支障を及ぼすおそれがあ
る化学物質による環境の汚染を防止するため、新規の化学物質の製造又は輸入に際し事前にその化学物質の性状に関して審査する制度を設けるとともに、その有する性状等に応じ、化学物質の製造、輸入、使用等について必要な規制を行うことを目的とする。
2 言葉の定義
一 毒物及び劇物取締法 (昭和二十五年法律第三百三号)第二条第三項 に規定する特定毒物
二 覚せい剤取締法 (昭和二十六年法律第二百五十二号)第二条第一項 に規定する覚せい剤及び
同条第五項 に規定する覚せい剤原料
三 麻薬及び向精神薬取締法 (昭和二十八年法律第十四号)第二条第一号 に規定する麻薬
2 この法律において「第一種特定化学物質」とは、次の各号のいずれかに該当する化学物質で
政令で定めるものをいう。
一 イ及びロに該当するものであること。
イ 自然的作用による化学的変化を生じにくいものであり、かつ、生物の体内に蓄積されやす
いもの
であること。
ロ 次のいずれかに該当するものであること。
(1) 継続的に摂取される場合には、人の健康を損なうおそれがあるものであること。
(2) 継続的に摂取される場合には、高次捕食動物(生活環境動植物(その生息又は生育に支障を生ずる場合には、人の生活環境の保全上支障を生ずるおそれがある動植物をいう。以下同じ。)に該当する動物のうち、食物連鎖を通じてイに該当する化学物質を最もその体内に蓄積しやすい状況にあるものをいう。以下同じ。)の生息又は生育に支障を及ぼすおそれがあるものであること。
二 当該化学物質が自然的作用による化学的変化を生じやすいものである場合には、自然的作
用による化学的変化により生成する化学物質(元素を含む。)が前号イ及びロに該当するものであること。
3 この法律において「第二種特定化学物質」とは、次の各号のいずれかに該当し、かつ、そ
の有する性状及びその製造、輸入、使用等の状況からみて相当広範な地域の環境において当該
化学物質が相当程度残留しているか、又は近くその状況に至ることが確実であると見込まれる
ことにより、人の健康に係る被害又は生活環境動植物の生息若しくは生育に係る被害を生ずる
おそれがあると認められる化学物質で政令で定めるものをいう。
一 イ又はロのいずれかに該当するものであること。
イ 継続的に摂取される場合には人の健康を損なうおそれがあるもの(前項第一号に該当する
ものを除く。)であること。
ロ 当該化学物質が自然的作用による化学的変化を生じやすいものである場合には、自然的作
用による化学的変化により生成する化学物質(元素を含む。)がイに該当するもの(自然的作用による 化学的変化を生じにくいものに限る。)であること。
二 イ又はロのいずれかに該当するものであること。
イ 継続的に摂取され、又はこれにさらされる場合には生活環境動植物の生息又は生育に支障
を及ぼすおそれがあるもの(前項第一号に該当するものを除く。)であること。
ロ 当該化学物質が自然的作用による化学的変化を生じやすいものである場合には、自然的作
用による化学的変化により生成する化学物質(元素を含む。)がイに該当するもの(自然的作用による化学的変化を生じにくいものに限る。)であること。
4 この法律において「監視化学物質」とは、次の各号のいずれかに該当する化学物質(新規化学
物質を除く。)で厚生労働大臣、経済産業大臣及び環境大臣が指定するものをいう。
一 第二項第一号イに該当するものであり、かつ、同号ロに該当するかどうか明らかでないも
のであること。
二 当該化学物質が自然的作用による化学的変化を生じやすいものである場合には、自然的作
用による化学的変化により生成する化学物質(元素を含む。)が前号に該当するものであること。
5 この法律において「優先評価化学物質」とは、その化学物質に関して得られている知見からみ
て、当該化学物質が第三項各号のいずれにも該当しないことが明らかであると認められず、かつ、その知見及びそ の製造、輸入等の状況からみて、当該化学物質が環境において相当程度残留しているか、又はその状況に至る見込みがあると認められる化学物質であつて、当該化学物質による環境の汚染により人の健康に係る被害又は生活環境動植物の生息若しくは生育に係る被害を生ずるおそれがないと認められないものであるため、その性状に関する情報を収集し、及びその使用等の状況を把握することにより、そのおそれがあるものであるかどうかについての評価を優先的に行う必要があると認められる化学物質として厚生労働大臣、経済産業大臣及び環境大臣が指定するものをいう。
6 この法律において「新規化学物質」とは、次に掲げる化学物質以外の化学物質をいう。
一 第四条第四項(第五条第九項において読み替えて準用する場合及び第七条第二項において
準用する場合を含む。)の規定により厚生労働大臣、経済産業大臣及び環境大臣が公示した化学物質
二 第一種特定化学物質
三 第二種特定化学物質
四 優先評価化学物質(第十一条(第二号ニに係る部分に限る。)の規定により指定を取り消
されたものを含む。)
五 附則第二条第四項の規定により通商産業大臣が公示した同条第一項に規定する既存化学物
質名簿に記載されている化学物質(前各号に掲げるものを除く。)
六 附則第四条の規定により厚生労働大臣、経済産業大臣及び環境大臣が公示した同条に規定
する表に記載されている化学物質(前各号に掲げるものを除く。)
7 この法律において「一般化学物質」とは、次に掲げる化学物質(優先評価化学物質、監視化学
物質、第一種特定化学物質及び第二種特定化学物質を除く。)をいう。
一 前項第一号、第五号又は第六号に掲げる化学物質
二 第十一条(第二号ニに係る部分に限る。)の規定により優先評価化学物質の指定を取り消
された化学物質
8 厚生労働大臣、経済産業大臣及び環境大臣は、第四項又は第五項の規定により一の化学物質を
監視化学物質又は優先評価化学物質として指定したときは、遅滞なく、その名称を公示しなければならない。
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保全に関する法令(大気汚染
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(EMS-C21350)
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